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一枚の白い紙、untitled 2

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吹奏楽部のしょうこちゃんはパインアメがすきだった。

甘くて、黄色くて、小さくて、真ん中に穴が開いていて、その穴からのぞく世界はなんでも甘ったるく、とろけそうで、夢の中みたいだった。なめているとパインアメはアメのなかにできていた気泡が出てきてその気泡の端っこで舌を切ってしまうことがよくあった。

するとそこからはきれいな赤色の血が出て、パインアメは血のパインアメになった。だけどしょうこちゃんそれでもパインアメがすきだった。

むしろそのことも含めて好きだったのかもしれない。

定かではない。

そんなしょうこちゃんはトランペットを吹いていた。

プープープー

トランペットは明るい小さな女の子が元気よく「はいっ」といって手を上げるときのような、色で言うと白か黄色みたいな音が出る。そんなところがすきだった。

そんなしょうこちゃんはトランペットの練習をしながら、グラウンドでサッカーの練習をしている清水くんを見ていた。

幸太郎の手は滑る。

キャンバスの上をフィギアアイススケートの選手みたいに幸太郎の大きくて少し曲がった繊細だけどしっかりとしたその美しい手はあっちへこっちへと滑ってゆく。

それは決められたコースを走っていたかと思えば急にまるで検討はずれの場所へと進む。

いつのまにか薄暗い美術室には黒の綺麗にアイロンをかけられた燕尾をきちんと着たバイオリン奏者があらわれぞっとするような美しい音色をかなではじめでいた。

次はピアノ奏者、黒板の近くにいる。ピアノ奏者の女は25歳くらいで真っ赤なマーメイドドレスを着ている、自慢の黒髪をなびかせながら情熱的に彼女は鍵盤をたたく。そんな彼女に見とれているといつのまにやら貫禄のあるホルン奏者、足の長いやせこけたコントラバス奏者、性格はいじわるそうだけど音色はぴかいちのフルート奏者がそろってあらわれ、いつの間にやら美術室オーケストラが素敵な演奏をかなでていた。

幸太郎の手が呼んできた美術室オーケストラなのに、いまや彼の手はその演奏に踊らされている。

そうやって幸太郎はしょうこちゃんがパインアメの穴の中からのぞいた夢の中の世界をキャンバスの上に出現させようとしている。本人はそうしようなんてこれっぽちだっておもってやしない。ただ、描いているだけ。滑ってるだけ。

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